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減少するサラ金の多重債務問題、くすぶる規制撤廃議論で過去へ揺り戻し懸念も

報道によると、アベノミクスと呼ばれる第2次安倍晋三政権が推し進める経済政策が、ますます勢いを増しているようだ。内閣府が4月初旬に発表した3月における景気ウォッチャー調査でも、景気実感を示す「現状判断指数」が5カ月連続で上昇していると報じられた。確かに、数字の上では経済は上向きの動きを見せているらしい。

 

その一方で、時事通信が「安倍内閣の発足以降、景気の回復を実感するかどうか」について実施したアンケートでは、「実感しない」という回答が全体の68.6%で、実感すると答えた人は23.7%だった。

 これらの数字をどう読むかはさておき、安倍内閣は今後も選挙時に掲げた公約の内容を、さらに推し進めていくことはまず間違いないだろう。同公約の内容には疑問に感じるものも少なくないが、そのなかのひとつが、2010年に施行された、改正貸金業法による総量規制についての見直しである。

 具体的な自民党の公約は、次の通りである。

「182 適正な規模の小口金融市場の実現と真の返済困難者の救済

 2006年12月の改正貸金業法の成立、2010年6月の同法の完全施行という一連の流れの中で、市場の収縮・マクロ経済への悪影響、新種のヤミ金の暗躍、返済困難者の放置といった様々な影響が顕在化しています。そのため、上限金利規制、総量規制といった小口金融市場に対する過剰な規制を見直すことによって利用者の利便性を確保します。同時に、多重債務者に対する支援体制を強化するとともに、ヤミ金融業者の摘発強化、適正業者の育成を図り、健全な借り手と健全な貸し手による適正な規模の小口金融市場の実現と真の返済困難者の救済を目指します」(自民党選挙公約『Jファイル2012』より)

 問題なのはいうまでもなく、「上限金利規制、総量規制といった小口金融市場に対する過剰な規制を見直す」という部分である。

 「総量規制」とは、貸金業者から消費者への貸付を年収の3分の1以下に制限することである。そもそも、多重債務が多発したのは、貸金業者による過剰な融資が原因だったことは何よりも明らかだ。返済能力を大幅に超える融資を、しかも年率25パーセントを超える高金利で貸し付ければ、やがて返済不能に陥るのは目に見えている。かつては年収200万円程度しかないアルバイトや派遣社員、さらに収入のない主婦にすら300万円以上も貸し付けるケースが珍しくなかったという状況は、今から考えれば正常とはいえなかろう。

 貸付すなわち借金というものは、あくまで返済とセットにして考えなくてはならないものである。1980年代以前のような、アルバイトなどの非正規労働者でも右肩上がりで給与が確実に上がっていた時代ならいざ知らず、現在では正社員ですら昇給が不安定な状況である。そうした返済能力が全体的に低下している時代において、総量規制という政策は至極当然のものである。

 ところが、2010年の総量規制施行直前には、一部議員や一部エコノミストなどから、総量規制によってかえって庶民生活が圧迫され、さらにヤミ金などが増えるとの指摘もあった。当時の報道を振り返ると、「週刊朝日」(朝日新聞出版/10年7月10日号)では「改正貸金業法で借金難民750万人」と題した記事で、今後は総量規制にはじかれた人がヤミ金や悪徳商法の被害に遭うのではないかと警告しているし、月刊誌「THEMIS」(テーミス/10年6月号)でも、「改正貸金業法 悪徳弁護士&司法書士や闇金を増やす」という、ほぼ同じ趣旨の記事を掲載している。
●ヤミ金の被害、自己破産は減少傾向

 では、3年近くが経過した現在、ヤミ金被害や借金苦が増えているかというと、そうした事実を裏付けるものはほとんど見当たらない。前述の北氏の記事でも触れられているが、ヤミ金の被害や自己破産などは、この2年近くでかなり減少している。

 例えば、自己破産件数は、10年度が総数で13万1370件だったものが、11年には11万449件に減少している。12年ではさらに減るものと予測されている。ヤミ金被害の相談件数についても、警察や消費生活センターなどの統計をみても減少傾向にあると考えられよう。12年2月頃には、一部地域で「増加した」などと報じられたこともあったが、全体としてみれば総量規制の効果は現れているとみられている。

 もし、総量規制に問題があったとすれば、すでに融資を利用していた人に対する強引な返済要求、いわば「貸しはがし」であろう。その実態について、神奈川県に住むAさん(40代主婦・パート社員)は話す。

「私が使っていたのは、クレジットカード1枚とカードローンが1枚。それだけでした。その頃、ショッピングの残高が30万円くらい、キャッシングとカードローンが合わせて50万円くらいでした」

 順調に毎月返済していたAさんだったが、総量規制にかかって、キャッシングとカードローンがまったく利用できなくなってしまった。

「専業主婦と間違われたのかもしれません。でも最初は、いい機会だから借金は全部返してしまおうと思ったんです。収入は月に6万円程度でしたが、返済分はなんとか払えそうでしたから」

 それまでは、キャッシングもカードローンもリボ払いで、それぞれ月額5000円、合計でも1万円支払えばよかった。ところが、いきなり両方とも1万円支払うようにとの請求が来るようになった。

「以前は、残高が減ってくれば支払い金額も減ったので、そうなると思っていたんです。ところが、残高が減っても、相変わらず1万円の請求なんです」

 そうしているうち、支払いできないことがあった。すると、その分が次の月にそっくり上乗せされた。そうなると、もう払うのは難しくなった。「少しでも、払える分でも」と思ってATMにカードを入れると、操作途中でカードが排出された。支払いが3カ月以上滞納していたため、すでに利用できなくなってしまっていたのである。

「パートの収入は、生活費などのやりくりでとても大変なんです。たとえ5000円でも大金です。あんなに一方的な請求をされたら、とても払えません」

 その後、Aさんはカード会社と交渉し、残高を毎月1万円ずつ払っている。カード類は、まったく使えなくなってしまった。
●根強い総量規制見直し論

 このように、借金というのはまだまた「貸す側」の論理が強いものなのである。総量規制によって、かつてのような借金苦が減少してきているとはいえ、不測の事態が起きれば借り手は非常に厳しい状況に追いやられることも珍しくない。

 にもかかわらず、10年以降も総量規制見直し論は根強く残った。自民党は金融部会「小口金融市場に関する小委員会」で法改正に向けた議論を進めており、民主党でも改正派によるワーキングチームが上限利率の引き上げと総量規制見直しで意見が一致していた。これに対して、12年8月頃には、各自治体の弁護士会が次々に貸金業法改悪反対の意見書を公表し、消費者保護の姿勢を強くした。

 このままでは議員立法で法改正に進むのではと危惧されたが、昨年11月2日の時点で小委員会レベルでストップしており、事実上の棚上げ状態になっているようだ。報道によれば、どうやら民主党内での意見対立から、結論が先送りになっているらしい。以後、とくに目立った動きは起きていないようである。

 しかし、当面の危機が去ったとはいえ、アベノミクスによる「効果」が連日報じられ、さらに高い支持率に胸を張る安倍政権が、どんな動きを仕掛けて来るのかわからない。これまでにも、「忘れた頃に」「物陰に隠れるように」、法改正が国会を通過してしまったことなど何度もあるからだ。

 大手消費者金融・武富士(現TFK)の元社員であり、『実録「取り立て屋」稼業―元サラ金マン懺悔の告白』(小学館文庫)の著者でもある杉本哲之氏も、貸金業法改正について「自民党がいつ仕掛けてくるかわからない」「先の選挙で、改正派議員が何人も国会に戻りました。そうした議員たちが、いつ強行するとも限りません」
と指摘する。

 ようやく解決の兆しが見えてきた多重債務問題が、貸金業法改正という経済優先の論理でまた逆戻りしてしまう可能性があるのだ。自民党公約にある「真の返済困難者の救済」という点が、具体的にまったく見えてこない。近年の多重債務問題は、雇用問題ならびに生活問題と深く結びついている。この点をあわせて考えない限り、真の返済困難者の救済は難しいといえよう。

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