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生き延びる「ヤミ金」、貸金業法の規制緩和論に影-渦巻く両論

報道によると、  2002年2月の寒い朝。吉田豊樹氏は埼玉にある実家の工場で首つり自殺を図った。傍らでは法定外の高利貸し「ヤミ金」から催促の電話が鳴り響いていた-。

多重債務者を減らす狙いの2010年の改正貸金業法の完全施行から2年が経過したいま、規制緩和論が浮上している。果たして時代は逆戻りしてしまうのか。

あれから約10年。40歳となった吉田氏はヤミ金被害者の支援団体である「夜明けの会」で活動中だ。彼を自殺未遂に追い込んだのは年利5000%にも上る借金の取り立てだった。100社近くのヤミ金からお金を借り総額5000万円以上を返済に費やした。夜明けの会で弁護士らの協力を得てようやく借金を解消し、現在は被害者のために働いている。

2年前までに完全施行された貸金業法改正など規制強化の主な内容は、融資上限金利の引き下げと年収に応じた総量規制の導入。違法業者の取り締まりも強化された。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは、「確かにヤミ金は減少してきた」が、高金利でも借りたい「零細事業者などに経済的制約をもたらしたのも事実だ」と指摘する。

こうした中、与野党の間で規制緩和論が浮上。自民党小口金融市場に関する小委員会は5月に上限金利の年30%への引き上げや総量規制の撤廃を盛り込んだ貸金業法などの改正案をまとめた。民主党改正貸金業法検討部会も7月に中小零細企業向けに限り上限金利を25%に引き上げ融資上限額も300万円程度に拡大する新法の案を示した。現行法上の上限は金利が20%、融資額が年収の3分の1までだ。

ヤミ金利用者、実際は増加か

自民党の平将明衆院議員は、過去の規制強化について「多重債務者問題の解決を目指した社会政策だったが、経済政策とのミスマッチが起こった」と指摘する。7年ほど前まで都内にある実家の青果卸売業の3代目社長だった平氏は、運転資金の確保に走り回ったが、銀行や政府系金融機関から借りられず結局、親族に助けられた苦い経験を持つ。

緩和論者の1人である東京情報大学の堂下浩教授は、10年にかけての規制強化を受け「正規の貸金業者から借りられなくなった零細事業主などがヤミ金に頼らざるを得なくなった」という。その上で、この副作用の解消には「上限金利の見直しや総量規制の撤廃が必要だ」と強調する。堂下教授が緩和論を主張するのには数字の裏付けがある。

警察庁が公表している11年の生活経済事犯は、ヤミ金事件の検挙数は366件と過去5年間で24%減少。経済生活問題を原因とする自殺者は05年の7756人から11年には6406人に減った。しかし、堂下教授はこうした裏で実際には、ヤミ金利用者は増えているという。

毎年8万2500人-9万4000人に上る消費者金融の利用者を調査している堂下教授らの研究チームでは、現在、ヤミ金利用者は約58万人と09年の42万人から増加したと推定している。堂下氏は最近では、「取り立てが厳しくなく、被害届の少ないソフトヤミ金やクレジットカードで購入した商品を現金化する2種類の違法業者が目立つ」としている。

初めてのヤミ金は5万円

00年6月。吉田氏は初めてヤミ金事務所のドアを開けた。風俗店などが入居する新宿の雑居ビル。スポーツ新聞の広告で見付けた。会社を半日休み、5万円を借りた。1週間の金利だけで2万7000円と年利2800%の高利貸しだ。結果的に池袋や神田などのヤミ金96社から借り入れ、督促の電話などで会社に知られ退職し、日雇い労働者になった。

吉田氏の借金生活は90年代初めにさかのぼる。家電メーカーに勤めていた当時の月給は12万円ほど。飲食費などをクレジットカードやそのキャッシング枠で使い切り、消費者金融からも借り入れた。その後、「消費者金融の返済にヤミ金を使い、そのヤミ金の返済にさらに別のヤミ金から借りることを繰り返す」悪循環に陥った。

ヤミ金業者と長年にわたり裁判で争ってきた宇都宮健児弁護士は、「時代に逆行する」と現在の規制緩和に向けた動きを警戒する。「借りる方の立場は圧倒的に弱い」とし、緩和すれば再び吉田氏のような多重債務者やヤミ金利用者が増えてしまうと懸念している。

正規業者は淘汰

年利109.5%-。1年で元本分が丸ごと利息となる。54年の上限金利(出資法)はこんなに高かった。それが83年11月以降段階的に引き下げられ00年6月に年29.2 %に。10年6月からは利息制限法の金利に一本化され、貸付額10万円未満で20%、50万円未満が18%、100万円以上が15%となった。一本化前は「グレーゾーン金利」問題も広がった。

08年までに整った規制強化を受け貸金業者の貸付残高は07年3月末の43兆円から11年3月末には26兆円(金融庁調べ)に激減した。同時に06年以降は利息制限法を超えた出資法上限までのグレーゾーン金利で払った「過払い利息」返還請求が相次ぎ、武富士が破綻。アコムやプロミスも業績が急速に悪化し、大手銀行グループの傘下に入った。

松下忠洋金融担当相は6月の会見で、与野党で貸金業法の見直しなどが議論されていることは承知しているが、「現時点でこの制度について直ちに見直すべき点はない」と発言。理由として貸金業から5件以上借り入れがある多重債務者数が07年3月末の171万人から12年3月末で44万人に減少し「相応の効果はあった」ことを挙げた。

背後に暴力団も

現行規制を維持すべきだと主張する宇都宮弁護士は、「ヤミ金融被害対策弁護団」の団長となり、被害者に訴訟参加を呼び掛けた。04年11月、山口組系暴力団、五菱会の梶山進幹部(当時)を相手取り、総額5億874万円の損害賠償を求めて集団訴訟を起こした。原告の総数は182人で吉田氏も加わった。

宇都宮氏によると、「ヤミ金の帝王」と呼ばれた梶山元幹部は資金洗浄の目的でスイスの銀行に51億円を隠し持っていたが、うち29億円は裁判で戦った原告や被害者らに返還された。同弁護士は「ビル・ゲイツさんのように大金持ちなら金融機関を選択できるが、低所得者は選択できない」と指摘。弱者にとって強い規制は必要不可欠だと強調する。

ある暴力団の構成員が匿名を条件に話したところによると、ヤミ金の貸し出し額は10万円から数千万円、金利は10日で10%のいわゆるトイチなど。貸出先は不動産業者や経営コンサルタントなどさまざま。組の上層部に支払う「上納金」作りが目的だという。

生き延びるヤミ金

福岡県警中央署によると、同署は6月、ヤミ金融を営んだとして稲冨信太、木下祐希両容疑者を貸金業法違反などで逮捕した。調べによると2人は延べ2万8000人に違法金利で貸し付け約4億2000万円の利益を得ていた。8月30日に福岡地方裁判所で両容疑者の初公判が行われる予定だ。

過去の規制強化がヤミ金利用者を増やしているのが実態という指摘と、緩和すれば逆にヤミ金利用者が増加してしまうという相反する2つの主張。両論が渦巻く中、結論は見えていない。

10年前の吉田氏の自殺は柱に掛けたベルトが切れ、幸いにも未遂に終わった。「夜明けの会」には借金問題を抱えた相談者が毎月12人ほど訪れる。200人を超えていたかつてからは大きく減った。自分自身が相談者の1人だった吉田氏は「常識が欠如していた」と当時を振り返る。いまは自殺未遂から人生を取り戻し、「ヤミ金から救ってくれた方々に感謝している」-。

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